”あなたの寿命が後10日だとしたら、どうしますか?” 何気なく開いた本に書かれていた言葉。 後10日で自分の命が終わるとしたら。 うん、それも悪くない。 自分の寿命が判るのは嬉しい。漠然と、永遠と、老いない体を抱えて生きる身には、「終わり」はこの上ない優しい約束だ。 10日間あるとしたら、何をしよう。 美味い物を食べて、酒を飲みまくって、思いっきり寝て、好みの女を抱いて、高い宿に泊まって贅沢の限りを尽くす。ギャンブルもいい。どうせ金を残す必要はないんだから。 いつも俺に絡んで来た海賊共やロウハク兄弟と、命がけのバトルをやるのも面白そうだ。 後は、言いたいこと全部言ってから死んでやる。 紋章への恨み、理不尽な運命への怒り、リーダーへの愚痴と感謝、そして。 「後10日しか生きられないって言われたら?うーん…」 この質問をアルドにもしてみた。こいつの答えは、予想がつくようなつかないようなだ。 「そうだね…びっくりするけどくよくよしてたら時間が勿体ないし、命一杯好きな事をしたいな。美味しいご飯を食べて、景色の綺麗な所に行って……あ、死ぬ前に荷物を整理と、お世話になった人たちにご挨拶しておかなきゃ。それだけで一日潰れちゃいそうだよ」 大体俺と同じような答えに、ちょっと苦笑い。俺もアルドも、死を悲観するような繊細さは持ち合わせていないらしい。 俺達に限らず、この船に乗っている戦闘員からは粗方似たような返事が返って来ることだろう。命を手にかける者たちは、多かれ少なかれ死を受け入れる覚悟が出来ている。 「その時はテッド君、僕に付き合ってくれるかな?」 「え?」 アルドがやや遠慮がちに微笑む。 「僕の最後の望み。テッド君と一緒に居たいんだ。僕の最後の10日間だけは、逃げないで一緒にいてくれる?笑ってくれとか、協力攻撃の後に握手してくれとかは言わないから」 「………」 全く、それがお前の望みかよ。バレバレだっての。 『一生のお願い』がそんな願いでいいのか。もっと願うべき事は他にあるだろうに。 だけど今のコイツの一番の望みがそれである事が……嬉しかった。 「じゃお前も俺の最後の願いをきいてくれるか」 「勿論だよ!テッド君の願いって何?」 「その時まで言わない」 約束だけを取り付けて、俺は身を翻す。口元に浮かんだ笑みを見られないように。 もし俺の命が後10日だとしたら。 美味いものを食って、酒を飲んで、俺が無愛想だと思ってる奴らの前で思い切り弾けて見せて、あいつらが呆けてる間にコイツを連れて船を下りて、景色が綺麗な所―ここらなら無人島か―に行ってのんびり寝て過ごして。 言いたい事を全部ぶちまけてやる。 俺がどんなにお前のことを かって事。 後がないなら理性で止める必要もない。 心臓が鼓動を止めるまで、与えられるもの全てを貪り続けてやる。 本当に、俺の命が後10日だったら良かったのに。 Iさんの新刊のテーマが萌えで、フレーズを借りて書いてしまいました。Iさんの本とは全然違う展開になりましたが。 アルテドのつもりで書き出したのに、何故かテドアルに…(笑)これはアルテドアルじゃなくて本当にテドアルです。 なので4主の名前は出てきません。テドアルネタはいつも一回こっきり。 |