相変わらずな僕ら


頭蓋骨をかち割って脳みそを引きずり出して中身を見せることが出来たなら、きっと笑われてしまう。
だって呆れるくらい、俺の頭はスノウのことだけ。
スノウの笑顔で一杯にしておけばいいものを、非生産的な感情ばかり生み出しているポンコツ機械。


今日は俺はスノウには会っていない。グレン団長の使いで、朝からミドルポートまで行って来た。帰ってきたのは夜も遅く、スノウはもう屋敷へ帰宅済みだ。一人寂しく騎士団の小部屋へ戻ろうとして、フンギに呼び止められた。
「お疲れさん、オーク。晩飯取っといたぜ」
「助かる。ありがとう、フンギ」
礼を言って包みを受け取る。中身はサンドイッチらしい。夜遅くに食べるには胃に負担が掛からなくてありがたい。
早速一つを口に放り込みながら、今日の騎士団の様子を聞く。
いつもと同じ訓練。代わり映えの無い日常。
OK、それでいい。俺がいない間に何かがあったら、グレン団長を恨む事になる。
「スノウの様子は?」
「いつもと同じさ」
フンギは小さく苦笑して、肩を竦めた。直後、ふっと思い出したように、
「そういや今日は珍しく、タルと剣を交えてたな。いつもはお前が留守の時は、訓練生の監視役に回るのに」
「…………そうか」
口の中のサンドイッチを嚥下して、残りは包みなおした。
「後は部屋で食べるよ。いつもありがとうフンギ。おやすみ」
「おやすみ、オーク」
笑顔でフンギと別れ、自室のドアをくぐった。
サンドイッチを無造作に机の上に放り出す。食欲はすっかりなくなった。
子供の頃から胸に巣くう黒いもやもやは、すっかり俺の躯の一部となった。
今ならこの感情の名前も知っている。
嫉妬。
スノウを独占して閉じ込めて、誰にも見せなかったらこの黒い塊は消えるのだろうか。
俺が一番だと、スノウが民衆の前で公言すれば満足するのか。
いや、そんなに甘いものじゃない。
俺の脳がスノウで埋め尽くされているように、スノウの脳を俺一色に染め抜きたい。
朝から晩まで、俺のことしか考えられなくしたい。
――そんなのは、もうスノウじゃないって判ってるのに。
スノウが人形になるなんて望んでない。なのに望む姿は人形のようなスノウ。
矛盾ほど苦しいものもない。






主スノは暗いです。