痛み
「……ふっ……………」 微かな吐息と共に寄せられる形のいい眉。 腕の中のその体はまだ少年のものだ。声変わりしていない高い声と、母親に似たのか女性的な顔立ちは、同性を抱いているのだという事を一瞬忘れさせる。 目を開ければ強い意志の光を秘めた琥珀が顔を覗かせるので、そんな考えはすぐに何処かに行ってしまうのだが。 「もういいから……さっさとやれば?」 その口を吐く言葉も、時折洩れる喘ぎ以外は色気が無い。 「……ちゃんと慣らさないとキツイのはお前だぞ」 「どうせ慣らしたって痛いのには変わらない」 「……お前な……」 歯に衣着せぬ物言いに眉を顰めると、くすくす笑って抱きしめるように腕が伸ばされる。抱いているのは俺の方なのに、これじゃどっちが抱いているのかわかりゃしない。 腕の望むまま抱き寄せられ、近くなった耳に仕返しとばかりに舌を差し入れる。不感症のシオンにはあまり効果がないのだが。 案の定特に反応は返らず、俺は諦めて耳を解放した。 「……本当に感度悪いな、お前……」 「判ってるくせに、今更だろ」 「そうなんだが……」 10も年下の子供に振り回されている様で面白くない。俺は腕の呪縛から逃れ体を起こすと、投げ出されたままの足を両肩に担ぎあげ、密やかな後ろにそっと舌で触れた。 「……っ……あっ…んんっ…」 途端に漏れ出す甘い声。不感症のシオンが唯一反応を返す場所だ。しかもその乱れっぷりが凄い。やる気の無い奴でも一発でその気にさせるような濡れた表情と喘ぎ。 丁寧にその部分を愛撫してやる。快感から逃れようと両足が必死に閉じようとするが、間に俺の頭があってそれもままならない。 「イイか……?」 「そういうっ……事、を……訊くなっ…………っぁあっ……」 「お前だって女抱くとき言ってるだろ」 「…………」 「……あ、まだ経験無かったか」 「…うるさいっ」 視線から逃れるようにぷいっと顔を反らす。その目が潤んでいるのは、快感の為かそれとも別の理由か。 「ほら、もう挿れろってばっ。僕の声聞いてソノ気になってる癖にっ」 キッと睨みつけてくる様が、子供っぽくて可愛い。 普段はクールなコイツが、俺の前では比較的素顔を晒してくれているのを知っている。それは気を許してもらっているようで嬉しい。 「ああ、その気になってるよ……だから大人しくしてろ」 入り口に自身を触れさせ、二、三度軽く擦る。挿入の予感と弱い部分への刺激に、幼い体がびくんと跳ねる。見上げる表情が不安げなものに変わった。 「……大丈夫だ。力抜いてろ」 宥めるように頬にキスを落としながら、ゆっくりと中に押し入って行く。異物を押し出そうとする内壁の抵抗を振り払い、全てを収めきるまでは動きを止めない。 「……あ……あ、ああ……い、たっ……んんっ……」 すがり付いてくる体を抱き返し、侵略を続ける。それがコイツの望みだから。 「つ……力、抜けって……」 「抜ける訳ないだろっ……下手くそっ……」 「黙れ」 腰を引き寄せ一気に刺し貫く。 「……っ!………っっ……」 「動くからな」 痛みに声も無く震えているその体を、容赦せずに突き上げる。俺がこいつに与えてやれるのは、安らげる場所でも支えでもなく、泣く場所だ。 体裁も何もなく、その年齢のままに泣き叫ぶ事の出来る場所、それが俺の役割。 損な役なのかどうかは判らないが、コイツが俺の前でだけ泣くことが出来るというのなら、憎まれ役になって傷つけてやるのもいいだろう。 「ちょ……待、てっ……あ、…………ああっ……く……」 溢れ出した涙を唇で拭ってやりながら、激しく追い立てる。 だが判っているか。俺だって男を、ましてや子供を抱く趣味はない。 縋ってきたのがお前じゃなかったら、こんな真似はしなかった。 「……全部吐き出しちまえ」 嘆きも、痛みも、絶望も。 受け止めてやるから。 それが俺の出来る唯一のことだから。 この二人は同盟軍時代のが好きです。 まだこの頃だと坊ちゃんが幼い(どこが!) いや精神的にね… どっちにしてもフリック犯罪。 フリ坊を宣言と同時に、セリフを一部書き換えました。 |