昼寝 グレミオ特製チョコとナッツのパウンドケーキを届けに来たら、テッドはベッドの上で転寝をしていた。 焼き立てを急いで持ってきたのに。着いたらすぐ二人で食べようと思っていたから、ちょっと肩透かし。 でも寝ているのを起こすのもかわいそうだし…。 ケーキをテーブルに置いてベッドに腰掛け、寝ているテッドの顔を覗き込む。 そういやテッドの寝顔ってあんまり見たことないや。 テッドが屋敷に泊まる時も、僕は寝つきがいい方だから、灯かりが消えた5分後には寝てるし。 朝はテッドの方が目が覚めるの早いし。 別に早起きって訳じゃなくて、僕より睡眠時間が短くていいらしい。一日9時間は寝ている僕とは、一緒に寝ても起きる時間が違う訳だ。 目を閉じたテッドの顔は、いつもより少し幼い。前髪をかきあげて、普段見れないおでこを出してみる。こうするとますます幼くなる。 薄く開いた唇から洩れる、規則正しい呼吸音。 ……なんかドキドキして来たかも。 キョロキョロと辺りを見渡し。 誰もいないのを確認してから、(テッドの家なのだから、人がいるわけ無いのだが)もう一度テッドの顔を見下ろす。 さっきから親指でさわさわと額を撫でたりしてるんだけど、テッドが起きる気配は、ない。 呼吸のリズムも一定だ。うん、大丈夫だよね。 そろそろと、寝ているテッドに顔を近づけていく。 唇が触れるか触れないかの位置で一瞬躊躇って、それからゆっくりと押し付けた。 「………っ!」 不意に頭をつかまれ、強く引き寄せられた。 「……テッ…」 驚いて思わず開いた口の中に、テッドの舌が潜り込んでくる。逃げようとする僕の舌をからめとり、口内の隅々まで舌を伸ばし。 「……………」 熱っぽいキスが終わった後の僕は、すっかり骨抜き状態になっていた。 足にも腰にも力が入らない。テッドに肩を支えててもらわなければ、今にも倒れこんでしまいそうだ。 テッドキス上手すぎなんだよっ!ずるいよっ。 「ごちそーさん」 ぺろりと唇を嘗める仕草に、顔に血が上る。 「テッド!!ずるいっ、寝たふりしてたんだろっ!」 「寝てたよ。キスで目が覚めたんだって。いやー、キスで起こされるのっていいもんだな。これから毎日こうやって起こしてくんない?」 「僕が起こさなくたって自分で起きるくせにっ!」 僕の方からキスするのは珍しくはないけど、寝込みを襲った後ろめたさというのはあるわけで。 照れ隠しもあって、怒鳴るような口調になってしまったのは仕方ない。 「お前が起こしに来るまで、起きないようにするからさ」 「毎朝僕にここまで来いって?起こして欲しいんなら、屋敷に住みなよっ」 「それは遠慮しときたいなあ」 「じゃあ諦めなよね」 テッドがうんと言わなかったことに、内心ほっとする。もし屋敷に一緒に住むようになったら、理性が保たない。 え、誰の理性かって? …………僕の。 だってテッドが同じ家にいるんだよっ。一緒にご飯食べたり、お風呂入ったり、それが毎日続くんだよっ。 そんなことになったら、僕は絶対今みたいに襲う!(断言) 今はまだキスだけだから、若気の至りとか冗談で笑って済ませるけど…本当は、もっとテッドに触れたいって思ってる。 女の子と寝るみたいに、寝たいとも思ってる。 その場合、僕はどっちの立場をやりたいのかなぁ。 テッド相手ならどっちだっていいんだけど。 どちらしても、僕のこの気持ちはテッドには言えない。 キスならともかく、男と寝るなんて気持ち悪いってテッドに言われたら、僕はもう立ち直れない。 はあ、切ない…。 「じゃ毎朝ってのは諦めるからさ、俺がまた昼寝してたら、キスで起こしてくれるか?」 「……疲れてるから昼寝するんじゃないの?」 「お前が来てる時に寝てたら勿体無い」 「……あっそ」 僕の馬鹿馬鹿っ!どうしてそんな素っ気無い態度しか取れないんだょっ。 本当は飛び上がりたい位嬉しいのに! テッドが隣でくすくす笑ってる。多分僕の気持ちなんてテッドにはお見通し。 悔しいなあ、もおっ。 「で、小腹が空いたんだけど、あっちでいい匂いさせているアレ、食べてもいいか?」 あ、すっかり忘れてた。 あれを温かいうちに食べさせてあげたくて、急いで来たのに。 「いいよ、食べよう。僕もお腹が空いた」 下手に興奮した所為で余計にね。 それから僕たちは向かい合って、テッドが淹れてくれたお茶を飲み、切り分けた甘いパウンドケーキを頬張った。 くすくすくす。 シオンってばすげー可愛いの。 キスされて目が覚めたなんて嘘。シオンが部屋に入ってきた時から、とっくに気づいてた。 本当はずっと寝たフリするつもりだったんだけど、俺もまだまだだね。キスされた瞬間、止まらなくなった。 なけなしの理性振り絞って、何とかキスだけで堪えたんだぜ。 シオンが俺のことを好きなことは知ってるし、俺もシオンを抱きたい。 俺が手を出せば、シオンが拒むわけ無いことも判ってる。 だけどさ。 もうちょっと今みたいな関係を続けるのも悪くないなって思うんだ。 シオンがもう少し、大きくなるまでは。 こうして俺は、シオンが来そうな午後の時間、眠くもないのにベッドに横たわって目を閉じる。 まるで王子様のキスを待つ、眠り姫のように。 テ坊第一弾。まだちょっと書き方が手探り。 坊テと比べると、シオンはマセていて、テッドは余裕がありますな。 |