星見の結果をグレイズに届けると、すぐさま次の任務を言い渡された。
だが既に日が落ちていることもあり、ロックランド行きは翌日に持ち越された。
夕食をとりながら、皆で今日あった出来事を振り返る。
竜の上は居心地が良かったが、竜騎士見習いと魔術師の弟子が生意気だったと文句を言うテッドの様子が懐かしくて、普段は負けじと喋るシオンが、今日はひたすら聞き役に回っていた。
夕食後、席を立とうとしたシオンにテッドが声をかけてきた。
「なあなあ、ちょっと話しないか?」
 
リーン…リーン…

テッドの声に合わせて、どこからともなく澄んだ音が聞こえてきた。
「鈴……?」
「へ、鈴の音?」
テッドがキョロキョロと辺りを見回す。
「鈴の音なんてしないぜ。空耳じゃないのか?」
「え……?」

リーン…リーン…

今もこんなにはっきり聞こえているのに。
(テッドにはこの音が聞こえないのか?)

運命の別れ道、未来を変えることの出来る分岐点では、標を与えよう。

ごくりと息を飲む。
この鈴が標か。運命を左右する別れ道。
この選択から、シオンの知る未来が変化していくのだ。
シオンは心に浮かんだ言葉を慎重に選び、口を開いた。


「いいよ。テッドの部屋に行こう」
「いいよ。僕の部屋に行こう」
「ごめん。明日に備えてもう寝たいんだ」