「どうして真実を告げないんです?」
問いかけに、澄んだ青の瞳が振り返った。
「あの子の母親が死んだのは、あなたの所為ではない。むしろあなたのお陰で、彼女の魂は救われた事でしょう」
泣き腫らし、燃え上がらんばかりの憎しみを湛えた目で、彼を親の敵と罵った子供。
その中傷を、彼は否定する事無く受け止めた。
「あの子はあなたをとても慕っていた。信じていた相手に裏切られたと、どれ程傷ついているか…」
「――あの子はこれから一人で生きていかなければならない」
彼の唇から、静かな声が漏れた。
「憎む相手まで奪ってしまっては酷だ」
誰も責めようがない理不尽な真実を知るよりも、憎しみの炎を燃やす方が生きる力になる。
自分の手で救えないなら、憎ませてやるのが彼の優しさか。
それはなんて温かくて、淋しい。

あの背中が忘れられない。
あれこそ王。真の指導者。
群集の前に立つ時、いつもあの背中を思い出す。
いつか彼の背に追いつけるようにと。



150歳頃の4主。
もう一人の声の主は、王子でも、どっかのリーダーでも。
王子と4主が面識があったかどうかまだ決めていないので、曖昧に。



<<-戻る