眠るテッドを残して、体を拭くための水を取りに行く。
身に着けているのは、かろうじて引きずり出せた下着だけ。残りは今テッドの体の下敷きになっている。 赤 触れた唇は、温度を感じさせなかった。 テッドが正気に戻る前に、白いシーツの海に縫い付ける。 あらかじめ緩めておいた己の腰紐を抜き取り、素早く手首に巻きつけ動きを封じた。 「……っ……!…」 罵るテッドの声を意識から追い出して。 普段滅多に見ることのない肌を性急に暴き立てていく。 薄い胸。 薄い腹。 細い足。 陶器のように白い肌。 自分の体にも付いている、排泄の、生殖の為の器官であるそれすらも、テッドの体はまるで一つの芸術作品であるかのように生々しさを感じない。 触れたらちゃんと温かいんだろうか。 抱くのは初めてという訳でもないのに、そんな馬鹿げた疑問が頭を過ぎるほど。 口内に含んだそれはちゃんと生き物としての熱を持っていて、徐々に熱く、大きさを増していく様に笑みがこぼれた。 「……っ!……っ……」 頭上で響くテッドの罵声が、やがて短い吐息とすすり泣きに変わる。 切なげに悶える足を押さえつけて、滲み出した先走りを後ろにすりこむ。密やかな場所が脅える。 指を引き抜き、ゆっくりと、指以上に太いそれでテッドを侵食した。 「……っ…………!……」 目も眩むようなきつさと熱さ。 先端を締め付ける柔らかな肉を押しのけ、更に奥へ奥へと身を進める。 反らされた白い喉元が、やけに美しかった。体を伸ばし、深い鎖骨の窪みに唇を落とす。染まるように滲む赤。 窪みのすぐ下の赤く熟した突起は、丁寧に舌で嘗めあげた。嘗めれば嘗めるほどその色は鮮やかさを増し、艶やかに濡れて捕食者を誘う。 誘惑に負けて一粒噛んでみる。果実をもぎ取られる痛みに、親木が悲鳴をあげた。 苛めてしまった事を果実に詫び、再び脈打つ白い首筋に舌を伸ばす。どくんどくんと血流を強く感じる場所に印をつける。 一箇所、二箇所、三箇所。 マーキングしたそれらは、牙を立てれば熱い血潮が噴出す命の場所。 腹と腹の間で擦られたテッド自身が、いつの間にか解放を求めて打ち震えているのが愛しかった。 ゆっくりと優しく、掌で愛撫を。 白いキャンバスに赤い花を。 細く狭い空洞を広げる熱い楔を、同時に捻じ込む。 暴れる手首を拘束する紐が、視界の端で揺れている。 「………」 喘ぎの中に自分の名を聞き、顔を上げた。 「これ……外せ……」 「外したら、逃げるだろ」 「この状態で逃げられるかよ…っ…」 確かに、二人の体は今、根元までぴっちりと隙間無く繋がっている。 両手を伸ばし、きつく結んだ固結びを解いた途端、テッドの手が伸びて。 ずるりと。 頭を風が吹き抜けた。 紐の代わりにテッドの手に握られているのは、自分の髪を覆っていたバンダナ。 「テッド……?」 問いかけに、テッドがにやりと笑い。 紐の跡が残る両手で、抱きしめられた。 返って来た応えは言葉ではなく、口付け。 「……っ……」 背に腕を回して抱き寄せ、重なった唇を深く求める。 腕の中の虚像が、実体になった瞬間。 しどけなく眠る線の細い体に、そっと手を這わせる。 右手には握り締めたままのバンダナ、左手には未だ絡まる赤い紐。 足の間に巻き込まれたシーツが肝心な部分を隠しているのが、かえって艶かしい。 だが熱情を誘うようないやらしさはない。 先ほど確かに肉の熱さを感じたはずなのに、横たわるその体は再び観賞すべき絵画へと立ち戻っている。 薄い胸、薄い腹、細い足、陶器のように白い肌。 その肌に散る無数の血の色。 赤い跡の一つに触れながら、くすりと小さく笑う。 まるで、聖女を犯す気分だ。
*回さんへ捧ぐ* 回さんちの裏にあった絵に、思いっきり妄想かきたてられまして。 |