「ソウルイーターを返す」
「シオン!?」 「良い子ね……さあシオン、こちらにいらっしゃい。他の者は動くんじゃないよ」 「ああ」 呆然としている仲間たちを残し、一歩、二歩、ゆっくりとテッドに向かって歩き出す。 ソウルイーターが傍にあれば、テッドは一時自分を取り戻すことが出来た。 ならば紋章をテッドに返せば、完全に支配の紋章から逃れられるのではないか。 間違えばウィンディに力を与えてしまう。危険な賭けだった。 微笑を浮かべたテッドが、シオンに向かって右手を差し伸べる。以前と変わらぬ優しい笑み。 「テッド……」 「紋章、守ってくれって言っただろ?」 「……っ……!」 手が触れたと思った瞬間、強く抱きしめられ。そして。 「さあ、ソウルイーター!かつての主人として命じる!今度は俺の魂を盗み取るがいい!」 「テッドっ……」 同じ光景。 何度も後悔したあの光景。 テッドの魂を喰らう瞬間。 「うあああああっっ……」 ソウルイーターが傍にあったお陰で、テッドは確かに自分を取り戻せていた。 正気の彼ならば、どんな道を選ぶか判りきっていたはずなのに。 一度ならず二度までも腕の中で親友を失ったシオンは、己の不甲斐なさを責め、彼が最後に触れた己が体を抱きしめ号泣した。 次頁 |