笑顔って便利だよな。
ちょっとした気まずい雰囲気も、笑っておけば大抵その場は収まる。
気付かなかっただろ?今の言葉に俺が傷ついた、なんて。
気付かなくていいんだ。言ったからってどうせ何も変わらない。
考え方が全く同じ人間なんていないんだから。
波風を立てない、これが一番簡単で楽な方法。


俺の思考は俺だけのものだ。
何に感動し、何を喜び、何を悲しむか、それは俺にしか判らない。
本当の気持ちなんて、本人以外の誰にもわかりっこない。
ここにいるのはほんの僅かな期間なんだから。
だったら適当に話を合わせて、楽しく過ごせる方がいい。
心を見せる必要なんてないだろ。



時々…心揺れる時はあるけど。


こいつになら、見せてもいいかなって。
こいつなら、俺の気持ちに頷いてくれるんじゃないかなって。
甘い夢を見たくなる。



夢だよ。


だって、何度そうやって失望した?
こいつなら大丈夫って信じて、心を許して……その時は幸せだった。
でも時間の流れと共に、些細なことで人の心は離れていく。


なあ、お前らにとって俺は何?
何があってもにこにこ笑って許してくれる、ただの都合のいい相手か?
違う。
俺はお前らと心を通わせたかった。



ムシロ愛シテ欲シカッタノハ俺ノ方。



もうあんな思いはしたくない。
大好きで、信頼していた相手と心がすれ違っていくのは、何よりもの苦痛。
何層にも塗り固めた心の壁も、内側からの傷にはこんなにも弱くて。
ならばもう二度と。
二度と誰も心に近づけない。
最初から一人なら、新たな傷がつくことはない。







だから、俺は笑う。




青いそら

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