「部屋に帰るよ」
立ち上がって微笑みかける。
「このベッドに二人はきついだろ。疲れてるんならゆっくり休めた方がいいしね」
「そっか……そうだな」 
意外な答えだったらしい。テッドの目が大きく見開かれ、少し寂しげに笑った。
「お前も疲れてるよな。ごめん、何か今日はお前がここに泊まってくみたいな気がしてさ」
「え……?」
どきりとする。テッドに心の声を聞かれたような気がした。
久しぶりの再会だ。本当は少しでも長くテッドの傍にいたかった。だが疲れている彼の眠りを妨げないように、今日は自室に戻ることにしたのだ。
あの頃と違って、今はもう我侭を主張するだけの子供ではない。
「僕は疲れてないよ。泊まってっていいんなら、お邪魔したいな」
「ああ泊まって行けよ。ちょっと狭いけどな」
にっと笑ってテッドは寝具に潜り込み、招くようにぽんぽんと隣のスペースを叩いた。
シオンも上着とバンダナを外し、部屋にあった夜着に着替えて隣に滑り込む。
ベッドの中は、テッドの温もりでほんのり温かい。
「やっぱ狭いな」
「くっついてれば狭くないよ」
頭を突き合わせ、子供のようにはしゃぐ。
以前もよくこうして二人で眠った。家族以外の誰かに、こんなに近く寄り添えるのが嬉しかった。
触れている部分から伝わってくるテッドの熱。
それは確かにテッドが生きてここにいる証だった。


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