「ごめん。明日に備えてもう寝たいんだ。疲れたし」
やんわりと申し訳なさ気に謝る。
実際シオンはひどく疲れていた。肉体的にではなく精神的に。
考えるべきことはたくさんあった。明日は清風山だ。どんなことをしてもテッドは付いてくるだろう。
どうすればテッドに紋章を使わせずに済むか、使ってしまったならどうやってウィンディの手から逃れるか……かつての記憶を呼び戻し、計画を練る必要があった。
「そうだな…そう言われれば俺も疲れたし、寝ることにするよ。おやすみ、シオン」
「おやすみテッド。また明日ね」
「ああ」
テッドの姿が階下に消えて行く。
また明日。明日になればまたテッドに会える。なんて夢のような。
それも全て、これからの自分の選択にかかっている。
本当は話したいことは幾らでもあったが、生きているテッドに浮かれて、一時の感情で時間を無駄にする訳にはいかないのだ。
「明日も明後日も、十年先も君と一緒にいられるように、僕は頑張るよ」
その為に今は、少しでも頭と体を休めておかなくてはならない。
自室の部屋の戸を開け、身支度をしてベッドに横になる。
前のときの自分の行動、皆の行動を思い返しながら、いつしかシオンは深い眠りに落ちて行った。


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