答えは決まった。
「連れて行く」
現代へ連れて行けるなら、今度こそ連れて行ってやりたかった。
肉親を失い、故郷を失い、たった一人になってしまった幼いテッド。彼がずっと笑顔でいられるように傍にいてあげたい。
彼を連れて行くことで、親友のテッドがどうなってしまうのかという不安はあった。
だが少なくともこのテッドが、三百年の放浪の旅をすることはなくなるのだ。
例え自分の知るテッドは消えても、その方が彼にとっては幸せなのではないだろうか…。
「一緒に行こう、テッド」
だがテッドは繋いでいたシオンの手を振り払い、後じさった。
「テッド?」
「ぼくはどこにもいかない。ここにいて、おじいちゃんを待つんだ」
「…テッド…君のおじいさんは…」
「ぼくはここにいる。おじいちゃんは帰ってくる!ぼくが村を守るんだっ」
「テッド!……」
テッドはくるりと身を翻すと、焼け落ちた村に向かって走って行った。
慌てておいかけようとするシオンをビクトールが止める。
「あの光が弱まってきた。あいつを連れ戻してる暇はねえ。行くぞっ」
「でもっ……」
「あいつは過去の人間だ。おそらく未来には連れていけねえよ」
「………テッド…」
テッドの姿はもう何処にもない。
後ろ髪引かれる思いで、祠に飛び込む。
過去を変えることはできなかった。


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