「いいよ。僕の部屋に行こう」
二人はシオンの部屋に向かった。
「あー、今日もグレミオさんのシチュー、美味かったな」
部屋に入るなり、テッドがシオンのベッドにダイビングする。枕を引き寄せ、ちゃっかり寛ぎモードに入っているテッドに苦笑しながら、シオンもベッドの淵に腰を下ろした。
「で、話って何?」
前の時は、テッドはこんな風に声をかけては来なかった。既に自分の記憶と食い違っている。
この小さな違いが、いずれテッドの運命にどんな変化をもたらすのか。
「ん……あのさ……」
枕に顔を埋めたまま逡巡していたテッドが、やがて意を決したように顔を上げ、起き上がった。
「昨日の話の続きなんだけど……お前は秘密を守れるよな?」
昨日の夕食前も、テッドはそんなことを言っていた。タイミングを逃してうやむやになっていたが、どうやら話というのはそのことらしい。
テッドがこんな風に言い澱む秘密と言うのは――彼の右手の紋章のことだろうか。
それとも「そろそろ出て行く」という、シオンにとっては絶交宣言にも似た告白なのだろうか。
この頃、テッドの様子がどこかおかしかったのは覚えている。何かを言おうとして言い澱んだり、シオンに隠れてどこかへ出かけたりすることが度々あった。
あの時聞かされなかった彼の秘密を、今聞くことができるのか。
だが聞いてしまったら…それはテッドとの別れの時なのではないだろうか。
聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが相反する。
その時、リーンという高い音がシオンの頭の中で鳴り響いた。


「内容による」
「うん。勿論守るよ」